三菱ふそう キャンター 4P10エンジン DUONIC搭載オートマのシフトレバーは動くがギアが入らない発進出来ない。
というDUONIC搭載のオートマチック車の修理作業依頼を受けました。
今回、無事に解決したので修理した内容をご紹介します。
ローザやキャンターのDUONICのギアが入らない理由や原因を知りたい方、又は整備士の人はこの記事を読んで解決してみてください。
症状はシフトは動くがギアが入らない症状の発生し前進ならびに後退も出来ないという症状です。

- 1 今回修理した車両情報・修理依頼内容
- 2 【症状確認】メーター内のギアのマークが赤点灯とシフトレバーは動くがギアが入らない
- 3 自動車の診断には故障診断機(スキャンツール)を利用
- 4 故障コード520708-7 トランスミッションのニュートラル・ポジションへのシフトはできません。
- 5 故障コード 520710-7 トランスミッションのニュートラル・ポジションへのシフトはできません
- 6 結論:ギアが入らない原因はスプラインの摩耗によるオイルポンプの作動不良
- 7 エラーコードが発生した理由
- 8 ギアシャフトユニットは電気信号と油圧で制御している
- 9 ギアシフトユニットを外してシフトレールの異常がないか点検し今回は異常なし
- 10 M/T乗せ換えで解決しました
- 11 DUONICは故障が多い
- 12 ATF・ギアオイル・エンジン・トランスミッションの整備を行った際は初期設定が必要です
今回修理した車両情報・修理依頼内容

【症状確認】メーター内のギアのマークが赤点灯とシフトレバーは動くがギアが入らない
症状を確認すると、メーター内のギアのマークが赤点灯とシフトレバーは動きますがギアが入らない。
発進できないという症状が同時に発生している状態です。
故障の症状をまとめると下記です。
- 朝にエンジンを始動して出発しようとしたけどシフトレバーは動くがギアが入らない
- メーター内のギアのマークが赤点灯している
- オートマチックトランスミッションからガラガラと異音がする
自動車の診断には故障診断機(スキャンツール)を利用
まず作業開始するにあたり故障診断機を利用しないと始まらないので、いつも利用しているGスキャンで診断します。
それでは早速診断を開始します。

- 520708 7 トランスミッションへのニュートラルシフトシフトが出来ません
- 520710 7 トランスミッションへのニュートラルシフトが出来ません
故障コード520708-7 トランスミッションのニュートラル・ポジションへのシフトはできません。
故障コードの発生条件は、ギアシャフトユニットレール1ニュートラル制御10秒継続でエンジンチェックランプが点灯。
復帰性は、スターターSW OFF⇒ON(ECUへの電源再投入)した時に正常信号になれば復帰
ECU制御内容:【車両停止判定以前】
- クラッチ双方断保持
- 当該レールギアシフトユニット制御中止
- 当該レール以外N保持(目標ギア段N固定)
- メーターギア段表示N点滅(P表示優先)
- メイン制御部セーフモード保持(エンジン制御停止)
【ギアシフトユニットシフト位置所定(*)状態&車速情報異常無&車両停止を判定】
【車速停止判定後】
- ギアプリセレクト禁止
- 当該レールギアシフトユニット制御中止
- 前進2nd,後進R-Hiによる走行継続
ウォーニング表示:ギアマーク橙
推定される故障の個所は、アクチュエーターのハーネス不良・アクチュエーター不良・T/Mの不良・DUONIC ECU 不良
故障コード 520710-7 トランスミッションのニュートラル・ポジションへのシフトはできません
発生条件は、ギアシャフトユニットレール1ニュートラル制御10秒継続でエンジンチェックランプが点灯
復帰性:スターターSW OFF⇒ON(ECUへの電源再投入)した時に正常信号になれば復帰
ECU制御内容
- クラッチ双方断保持
- 当該レールギアシフトユニット制御中止
- 当該レール以外N保持(目標ギア段N固定)
- メーターギア段表示N点滅(P表示優先)
- メイン制御部セーフモード保持(エンジン制御停止)
ウォーニング表示:ギアマーク赤
推定要因:アクチュエーターのハーネス不良・アクチュエーター不良・T/Mの不良・DUONIC ECU 不良
結論:ギアが入らない原因はスプラインの摩耗によるオイルポンプの作動不良
- ギアが入らない原因はスプラインの摩耗
DUONICのシフトチェンジの仕組みを簡単に説明します。
DUONICのギアチェンジの仕組みを簡単に解説すると、DUONICのシフトチェンジは油圧と電気信号により制御しています。
オイルポンプで油圧を発生させ油圧でギアシャフトユニットレールを作動させ、ギアを入力。
電気信号でギアポジション位置を認識しています。
つまりスプラインが摩耗していると、オイルポンプが正常に作動しないと同時にギアシャフトユニットレールは作動しません。
ということはギアが入らないしギアポジション位置の認識不可という判定になりエラーが発生するという仕組みです。
エラーコードが発生した理由
- 520708 7 トランスミッションへのニュートラルシフトシフトが出来ません
- 520710 7 トランスミッションへのニュートラルシフトが出来ません
ギアシャフトユニットレール1が油圧異常で作動不可となると、シフトを入力しているのにニュートラルで10秒継続が続くと故障コードが発生します。
エラーコードが発生した理由をまとめると下記です。
- スプラインの摩耗が原因でオイルポンプを動かすことが出来ない
- ギアシャフトユニットレールが不作動
- 10秒間シフトの入力不可と判断し故障コードが発生
ギアシャフトユニットは電気信号と油圧で制御している
ギアシャフトユニットの制御について詳しく書くとキリがないので簡単に解説します。
DUONICのギアの入力は電気信号と油圧制御でシフトユニットを制御コントロールを行っています。
ということは電気ハーネスの異常や断線&油圧異常が発生するとギアは入りません。
下記の部品がDUONICのギアシフトを行っているパーツです。
ギアシフトユニットとバルブボデー・デユアルクラッチです。
エンジン側にはダンパーというわれるダミークラッチがありダンパーが悪くなるとミッション辺りから大きな異音が発生するのがDUONIC定番の故障です。
そして今回の車両も大きな異音が鳴っていました。
いすゞのエルフの話になりますがエルフのオートマはスムーサーというシステムを採用されていて、動力伝達にはトルコンを採用しているのに対し。
キャンターはダミークラッチもどきが装着されています。
ダミークラッチクラッチのスプラインは動力が強く伝わる部分に負荷がかかりエンジン側のダンパーはミッション側同様に酷い状態。
ダンパーは衝撃を吸収できず、結果、スプラインに相当な負荷が掛かるんだと思わせる程に酷い状態です。
スプラインの山がもうズルズルでポンプは正常に作動しません。
こうして見ると4P10エンジン搭載のDUONIC搭載のオートマチック車のキャンターはダミークラッチのトラブルが多いという理由が理解出来ます。
そしてDUONIC搭載のオートマチック車のキャンターは中古車が安く出回っている理由も理解できるかと思います。
ギアシフトユニットを外してシフトレールの異常がないか点検し今回は異常なし
シフトレール単体点検では問題なくスムーズに動くということで。
今回の故障の原因については油圧異常で確定しました。
バルブボデーとデユアルクラッチを外しスプラインが摩耗の確認をします。
スプラインの摩耗がエグイですね。
M/T乗せ換えで解決しました
今回の場合は各部悪いところだけの交換を検討しましたが【三菱ふそう】さんに相談したところ、今後のトラブルも考えてM/T乗せ換えた方がいいとアドバイスをいただきました。
ということでお客さんに相談した結果、ミッション本体の交換で決着しました。
最後にオートマチックトランスミッションの初期をして作業終了です。
お疲れさまでした。
DUONICは故障が多い
DUONICについて調べてみたらエンジン同様にDUONICの故障は多いようです。
しかもスプラインの摩耗によりギアが入らなくなるという症状は特に凄く多いようですね。
今回、いちばん驚いたのは、DUONIC搭載車はギアが入らない時に、非常モードでギアを入れることが出来ないということです。
その点、いすゞのエルフは動力伝達部にトルクコンバーターを採用しているのでスムーサーシステムに故障が発生しても非常モードでギアを入力可能で走行も可能。
いすゞのエルフは凄く優秀なんだなとシミジミ感じました。
そんなわけで話は戻りますが。
- 今回はミッションを新品に乗せ換えた費用は40万円程。
- 工賃と合わせると50万円ほどとなりました。
ATF・ギアオイル・エンジン・トランスミッションの整備を行った際は初期設定が必要です
- ATF交換
- ギアオイル交換
- エンジン交換
- トランスミッション交換
の整備を行った際にはDUONICの初期設定が必要なんだ、とはいえ今回の記事ではDUONICの初期設定については解説しません。
DUONICの初期設定の詳しい情報は私以外のブロガーが記事として書いていますので探し当てて欲しいです。
ということで上記4つの作業を行った際はDUONICは初期設定が必要。
忘れずに初期設定して作業を完結して作業終了してくれると嬉しいなって思ったりもしました。